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yuko ikoma 
"esquisse"


tracklisting

01. shijima 4:17
02. waltz op.1 1:02
03. moderato 2:12
04. kiki 1:11
05. small window 1:46
06. underwater 2:43
07. powdery 2:50
08. in the air 2:29
09. no color 3:50
10. temperature 4:28
11. migiwa 1:06
12. minamo 3:24
13. waltz op.2 1:58
14. a little drop 4:52
15. more slowly 1:24

total time : 39:41

release date : 2007/2/7 (wed)
cat no : wb 10
label : wind bell
¥2,400(without tax)
¥2,520(including tax)

ふゆぞらに ゆきとほたるの あそぶおと  一青柳拓次


彼女はモレスキンの手帳を手に現れる。

手帳が開かれていても、会話を楽しんでいる間になにかが書きこまれることはまずない。
きっとひとりの時間に帰ったら、その余韻のなかで何かが書かれるのだろう。
その手帳の紙には五線譜が引かれている。
その五線譜上にその日の天候のことや、おいしかったもの、 その日に見えた音楽といったすべてを日記のように記しているという。

彼女は「日々のスケッチです。」と語る。
このアルバムはそうやって記されたもののいくつかを録音したものだという。

普段はアコーディオンを胸に抱える彼女がここではアコーディオンから離れ、 オルゴールと向かい合っている。 彼女のオルゴールへの偏愛はかなりのものだ。 オルゴールの楽譜シートが薄明かりのなか、その穴の中から広がる星座のような模様や 閉じられた瞼のうちに広がる音の波形を映し出せることを知っているのだから。

最初の録音は2005年の2月、2006年の8月までの間に断続的に行われた。 録音された場所もいきつけのお店の閉店後だったり休みの日だったり、 ヴォイスでゲスト参加している二階堂和美さんの部屋だったり、 旅行中に訪れたパリのマニュエルの部屋やブルターニュの古城といった場所が選ばれている。 そうすることである空気感のようなものを大事にしたかったのではないだろうか。

おそらく無意識の産物だと思われますが、サウンドモンタージュ、恩田晃さんが「シネマージュとは?」、「カセット・メモリーズ」で 書かれていること、winter& winter の Audio Film からリリースされた作品といったものを想起させる作風となっています。

つまり、日々の断片、記憶の数々に音楽という輪郭を与えていく作業。 ともすれば即興的で抽象的な音の破片・スケッチの迷路にリスナーを招くことになる音世界は オルゴールに導かれて、 その楽譜シート上を行き来する静かな手作業の時間を経て、きれいに整えられています。 その感触は手帳を開いた時に見出す糸口をそのままに、広がっていく様々な色調のイメージのようです。

彼女自身がほかに演奏している楽器はトイピアノ、コンサルティナ、アルト/テナー・リコーダー。 ゲストに二階堂和美の声、マニュエル・ビアンヴニュのカシオトーン、清水恒輔のバスリコーダー。 オルゴールもリコーダーもひとつの楽器で鳴らせる音がとても限られているけれども、 その限られた中で、音譜を組み合わせていくのが魅力的なのだそうだ。 すべてが最小限ながら、ひとりそしてふたりの中に広がる空間の広さ、インティメイトな空気が窓の外の空気や風景と共に記録されています。

燃えてなくなるより早く冷やされて砕けた、音の流れ星の破片のぶつかりあって奏でるような音と、 暖められて地表から立ちのぼる蒸気のゆらゆらと、登りきらずに漂うような音が、 メロディでつながれて曲になり空気を静かに揺らして響く。 繊細さとストイックな強さの微妙なバランスを保って。 きらきらの音の破片を飾った、蜘蛛の糸で編んだアンティークのレースみたいな曲を大気が支えている。

手の中に収まるこの音源が、何か遠く、この星の圏外、どこかの遊星の軌道だとかとリンクしているような妄想を呼び起こす。 どこかの暖められた部屋の中と、きれいで冷たい宇宙のどこかを繋いでいるのではないかと思い、 自分が居るのは星の上なのであり、地面は続いているのであり、 窓の外のあの月や星空と自分を隔てるものは無いのだとかいう、当たり前の、でも忘れてしまいそうなことを思ったりもする。

声さえも音として「言葉」を排し、空気ごと録音して、 くずれそうに丁寧に、幾重に重なり、メロディで繋がれた、丸くクリアな音の粒と、大気のようにゆったりと広く流れる音が、 夜空の冷たさと呼吸の暖かさを併せ持つ、 ただ、きれいな音のつながりとして響くそれが、 きれいなものを望むようにありたく願うこころに入ろうとする泥棒を追い払ってくれる、 木と金属製のブレーメンの音楽隊のようだし、 きれいで寂しい薄墨の、フクロウの鳴く森へ連れて行ってくれるハーメルンのようでもある。

羽を切られた鳥の姿を見せられて、自分も飛べないと思った鳥には、本当のことを囁く静かなアジテーターに違いないと思われる。 歌い得なかった音の星が、流れて砕けて響き出し、戻れない空をみあげてのんびりと旅に出る。 音を楽しむとはよく言うけれど、音も楽しんでいるのかもしれない。

一南 知子

オルゴール・music box・orgel

人々に時間を知らせるために大小の鐘を機械仕掛けで鳴らすカリヨンと呼ばれていたものが中世ヨーロッパのルネサンス期にあったそうです。 それがオルゴールの起源といわれています。ラジオもステレオもジュークボックスもなかった時代に音楽を楽しむ道具として、オルゴールの原型が完成したのは18世紀末のこと。その後、様々な技術の発明・発見があり、オルゴールを納める箱には、家具職人、馬具職人などの技術が生かされた、装飾・細工・粋が集約されたものが作られるようになりました。音楽を聴く道具としてだけでなく、美術品としての側面も備え、世界各地で製造されたオルゴールは現在でも世界中でそれぞれのヴィンテージの音色・形を愛する人々によって大切にされています。

生駒祐子

アコーディオンを中心に、トイピアノ、手廻しオルゴール、リコーダー、足踏みオルガン、手廻しオルガン・・・など 出逢った楽器や人に触発されながら、音楽を奏でている。 アコーディオン奏者として、コントラバス奏者・清水恒輔とのインストゥルメンタル・デュオ「mama ! milk 」としての 活動は早7年以上の月日が流れている。 世界各地の様々な空間ー古い劇場、美術館、廃墟となった建物、カフェ、石畳の広場、港に停泊する船の上、寺院、ギャラリーなど ある種の質感を肌で感じとれるような場所で演奏を重ねる、その独自の活動は二人の姿勢・考え方を示すものだ。 訪れるそれぞれの空間・その場に集まった人々の空気を感じとりながら、丁寧に音を紡いでいくパフォーマンスは 各地の実に様々な人々の支持を獲ている。 音楽家、舞台関係者、写真家、画家、映像作家、コンテンポラリー・ダンス、ファッション・デザイナー、アニメーション作家ノなど 幅広い分野の人々が彼女の音楽家としての個性そしてその人柄に信頼を寄せている。 音楽の世界にとどまらない他ジャンルの作家との共同制作も多い。 2006年秋のブリジット・セイント・ジョンとコリーンの来日公演をKama Aina、Moose Hill らとともにサポートし、 初めてソロとして演奏。音楽家として新たな側面を披露した。

エスキース/Esquisse

エスキースとは、油彩の完成作品に対する準備段階の仕事のうち、通常は、完成作品よりも小さなフォーマットにおいての下描きであり、芸術家が最初に抱いた感情や着想をとどめ、それらを理解し探求する手段として用いられる。エスキースが芸術家の想像力から生まれた自発的なインスピレーションの結果であり、そのインスピレーションに秩序を与え、画面に芸術家の創意を実現していくのに対して、エチュードは、風景や人物などのモデルからの自然観察によってなされた、光の効果を考慮したデッサンやスケッチである。例えば、歴史画や物語画の下描きとして、人物の配置や画面全体の構図を完成に導くのがエスキースであり、風景画の下描きはエチュードと言えよう。したがって、芸術家の想像力から生まれたエスキースは、自然観察からのエチュードよりも、より能動的な精神の働きが必要であると考えられている。 (安藤智子)
http://www.dnp.co.jp/artscape/reference/artwords/a_j/esquisse.html より転載

Q. 一オルゴールを自分の音楽にとりいれようと思ったのはいつ頃からですか?

mama!milkでファーストアルバムのレコーディングをしていた時。だから7年くらい前ですね。友人から「自分で作曲できるオルゴールがあるよ」と 教えてもらって、録音で使いました。パチンパチンと紙に穴をあけたら、音楽が鳴るのです。楽しくて、嬉しかったです。それからはライブでもレコーディングでも頻繁に使っています。

Q. 一ほかの楽器と比べた時に感じるオルゴールの個性はどんなところにありますか?

全音階、つまり、ピアノでいう、白鍵の音だけが鳴るところ。 ドレミファソラシドレミファソラシドレミファソラの20個の音だけが鳴るところ。 ぽろんぽろんと減衰する音だけが鳴るところ。手のひらの上で音が鳴るところ。 とってを廻すだけで誰にでも簡単に演奏できるところ。

Q. 一おそらく自分がほしい、好きな音色のオルゴールを手にするまでには時間を要したことと思いますが、 このアルバムに録音されているオルゴールの音はそういった自分の要望を職人の方に伝えて作られたものですか?

私の使っているオルゴール、4台はすべて、原田敬さんが調整したものです。市販のものとは違い、中全音律に調律されているので独特の響きを持ちます。また、楽器の材質や形にもこだわって、すべて手作りされたものです。 2年ほど前に彼の調整したオルゴールに出会ったのが、今回のアルバムをつくる大きなきっかけになりました。 そして、録音をはじめてからは、パーツを強化してもらったり、調律のパターンをかえてもらったり、 細かくメンテナンスをしてもらったり、彼にいろいろと相談にのってもらっています。

Q. 一書いた曲をオルゴールの楽譜シートにする作業はどのようにすすめられるのですか? (これは映像にしたほうがよいかもね)

映像にしてみたいですね。まずは、書いた曲の中から、オルゴールにふさわしい、と思う曲を選びます。 20個の音しか鳴らないので、この時点でだいぶ絞りこまれます。 それから、音符をいろいろ足したり、削ったりしながら、オルゴールできれいに響くように、試行錯誤します。 きっと彫刻みたいなものです。 シートにパンチで穴をあけて、オルゴールで鳴らして、じっと聴いて、それから、穴をふさいだり、また開けたり、 シートを切ったり、貼ったりを、繰り返します。ひたすら工作です。

Q. 一オルゴールは楽器だと思いますか? というのも、ほかの楽器と比べると、演奏する人のその時々の気持ちだとかそこから派生するテンポだとか曲想にニュアンスをくわえたりすることがむずかしいものだと思うからです。とても制約が多いというか。そんなやっかいなオルゴールを主役のひとりにしたのはなぜでしょう?

そんなやっかいなところに夢中になってしまいました。笑。 なんでも、やっかいなことほど夢中になってしまうものですね。 もどかしい思いをすればするほど、どんどん夢中になってしまいました。笑。
オルゴールは少々不器用だけど、愛らしい楽器だと思います。 ミュージシャンに、器用な人も不器用な人もいるように、楽器に、これくらい不器用な楽器があるのも、楽しいですね。